地方都市版意識高め婚活のすすめ
高校の同級生である私の夫は意識が高い。
中学生の時は成績は学年トップで生徒会長に立候補するという典型的な優等生。
高校の同学年の同窓会の幹事長。
現在は会社員の傍ら、社会的貢献度の高いコミュニティにいくつも所属している。
所属するだけでなく、自らもいわゆる地域活性化・地方創生を冠したコミュニティ活動を先導している。大学生時代も震災復興の支援団体を0から立ち上げたそうだ。
これだけやっているので根っからの意識高いキャラで定着している。
しかしそんな夫に、社会人になってから再会した時の私の感想はこうだ。
「今まで出会った男性の中で1番ちょろいぞこいつ」
理由は2つある。
夫をはじめとする意識の高い勢はとにかく自分の話を聞いてもらいたい。
そして周りの人の理解・共感・応援を我が物にしたいと思っている。
夫と出会った当初、夫が欲しいものを見抜いた私は「自分の話をよく聞いてくれるし、会話が盛り上がる人だ」と夫に思ってもらうために、あることを自分に課した。
それは「彼の名前でググって出てくるありとあらゆる記事を読み漁り、彼について予習をしておく」ことだ。
彼は大学時代から震災復興の支援団体を0から立ち上げたため、大学内でのインタビュー記事や新聞記事などが多数残っていた。私はそれを高校生がテスト勉強をするようにがむしゃらに読み漁り、彼の人となりについて予習をした。Facebookも彼の大学生時代まで遡って読んだ。
そしてデート当日は、彼について表面的にしか知らないふりをして、彼が話したそうな、予習済みの話題に誘導した。
結果は大成功。高校の同級生とはいえほぼ初対面。にも関わらず話は尽きず、日付を跨ぐまで盛り上がった。
夫をちょろいと思ったもう1つの理由は、そのアクティブさゆえにデートのネタが尽きないことだ。
いくつかのコミュニティに所属しているため、毎週何かしらのイベントのお知らせが来る。
週末の予定を立てずとも向こうから勝手にやってくる。
意識高いコミュニティは女性の比率が小さいことが多いがそんなところにも来てくれて、話が盛り上がる女性がいる。夫からしても願ったり叶ったりであることは私はわかりきっていた。
顔を合わせる機会は自然と増え、親密さは自動的に増していく。
ごく普通の男性とお付き合いをしていた時には考えられないことだった。
私たちが高校生だった時の話をしよう。
母校にトップの成績で入学した夫は、入学式で新入生代表挨拶をやってのけたらしいが、私はそんなことを1ミリも覚えてなかった。
1年目は違うクラスで、その後の進路も夫は文系、私は理系。
実は当時私たちに接点は全くなかった。
時は経ち、仙台で社会人生活を謳歌していた私は暇を持て余していた。
当時の彼氏ともうまくいっていなかった。
Facebookをだらだらと眺めていた私は、夫が転職で仙台に引っ越してきたことと、市内にあるNPO法人の運営メンバーに加入したことを知った。
「NPOってイベントいろいろやってるよな?これは暇をつぶせそうだ」
幸いにもそのNPOのオフィスは家から徒歩3分の場所にあり、好奇心を全開にした私はそのオフィスに突撃した。事前に活動内容を調べ、尋ねるにふさわしい理由も作っておいた。
作業中だった運営メンバーの1人から連絡先を受け取り、今後のイベントに顔を出す算段をつけることができた。
夫から連絡が来たのはそのあとだ。
私はしぬほど恥ずかしかった。
意識の高い夫の投稿を見て、暇つぶしにと思って突撃した自分のことを知れらたくなかった。
しかし夫は引っ越してきたばかりで友達もほとんどいない中で、よく知りもしない同級生と接点が持てたことが嬉しかったようだ。
それからはほぼ毎日のようにそのNPOのイベントのお知らせの連絡が来た。
お前は駆け引きというものを知らないのか?魂の大プッシュか?
当時うまくいっていなかった恋人ともちょうど別れた。
こうして2回、3回とデートを重ね、1ヶ月後には交際が始まり、2年後には結婚にこぎつけた。
「意識が高いやつほど、アプローチのための作戦が立てやすい」
これは私にとって大きな発見だった。
実は私は大学生の時に一度も恋人ができなかった。
女子大生なんて呼吸さえしていれば自然と恋人ができると思っていたが、そうではなかった。
地方都市在住の全ての婚活女子に告ぐ。ブルーオーシャンを見つけてしまった。
マッチングアプリで場数を踏んでいる場合ではない。
社会人向けのイベントを開催しているシェアオフィス/コワーキングスペースの類に顔を出すのだ。5個あるかないかのはずだ。
人見知りだって?そんな奴は置いていく。
少しレアなポケモンを捕まえると思って冒険に繰り出そう。
<<終わり>>